本格焼酎の分類


ウイスキー,ブランデー,ウォッカ,ジン,ラム…。世界には数々の優れた蒸留酒があります。どれもその土地土地の風土から生まれた逸品です。東洋の果ての小さな島国日本にも,知る人ぞ知る蒸留酒があります。それが焼酎です。焼酎は原料や造り方によって多様な種類があり、飲み方も多彩。さらに、世界でも唯一,食中酒として楽しめる蒸留酒というから驚きです。
日本では酒税法で,焼酎を二つに分けています。連続しき蒸留器で蒸留する焼酎甲類と単式蒸留器で蒸留する焼酎乙類です。前者をホワイトリカー,後者を本格焼酎といって区別しています。当店では本格焼酎に力を入れています。

本格焼酎の生産地は,九州,沖縄など南の地方に偏在しています。原料はさつま芋,米,麦,蕎麦など沖縄の泡盛をぬかすと各地域の代表的な農産物で作られています。九州以北の地域では,清酒の醸造過程でできる清酒粕や米を原料とするものが多いです。またこれ以外に,とうもろこし,かぼちゃ,胡麻,ジャガイモ,ナツメヤシ,わかめ,緑茶,人参などいろいろな原料で焼酎は造られています。

味わいはバラエティーに富み,原料の種類や,麹菌,酵母,蒸留方法,濾過の方法,熟成法によって風味がそれぞれ変わります。こんなに狭い国なのにこんなに味わいにバリエーションがあるというのは世界でも類を見ないものです。

黒糖焼酎 情熱の酒(産地:鹿児島県奄美諸島)

焼酎は約五百年前にシャムから沖縄に由来したと伝えられ,その後,沖縄から奄美群島に伝来し,製造技術に様々な改良工夫を加え,現在の本格黒糖焼酎が生まれました。奄美群島(奄美大島,喜界島,徳之島,沖永良部島,与論島)が昭和28年アメリカから返還された時、奄美の主要農産物である黒糖(さとうきび)で焼酎を造り飲んでいた実績が評価され,黒糖を原料にしての酒類製造は酒税法で奄美群島だけに認められました。

奄美の特産品「黒糖焼酎」はその野性味が米麹とまじり合い,まろやかな風味で初めての方にも抵抗なく飲める親しみやすい焼酎です。原料からいうとラム酒(ラム酒もさとうきびから作られているんですよ!)の親戚です。

泡盛 美酒に息づく琉球文化の粋(産地:沖縄)

1. 日本最古の天然蒸留酒
泡盛は琉球が南の国々との貿易が盛んだった15世紀初頭にシャム(タイ国)より入ったラオロンを祖としています。その製造法はインディカ米(硬質)を原料にし、全麹仕込みで始まります。その際用いる麹菌が沖縄独特の黒麹菌(クエン酸を良く出す)です。それを醗酵させ、もろみを作ることにより,泡盛特有のきりりとした風味と深い香りが出てきます。それを蒸留して誕生する酒の一滴一滴が,泡盛です。

2. 首里の城下町に伝わる由緒正しき銘酒
琉球王朝時代,泡盛は貴重な酒として王家の厳しい管理のもとで醸造されるようになり,首里の城下町・崎山,赤田,鳥堀の三箇所に住む40人の職人にのみ酒造りが許されました。しかもその厳重さたるや命がけで,"金庫の鍵は番頭に預けても酒蔵の鍵は主人が離さなかった"とさえ言われています。随所に残る杜の跡,緑深い丘陵を望む明媚な古都・首里で伝統に守られ,育まれてきたのが銘酒泡盛です。

3. 時の経つ程に深まるまろやかさ
泡盛は長期間貯蔵熟成させる事によって味、香りともに、深みが増してきます。3年以上貯蔵したものを古酒(クース)といい,その風味のまろやかさ、上品な香気は,比類なき素晴らしさで昔から人々の間で親しまれています。泡盛の魅力にはまった人は,ほとんど古酒好きとなります。

4. 古酒の造り方
まずは,親酒(最も貯蔵年数の長い酒)を準備する。それから年代順に酒を揃える。親酒から汲み出した量をAで補う。AはBからという風に順じ補うやり方が『仕次ぎ』である。以上の工程で常時美味しい古酒が飲めることになります。

米焼酎(産地:熊本県)

熊本県球磨郡、人吉市周辺はかって球磨地方といい、薩摩地方と並んでいち早く米焼酎造りが始まった地域です。薩摩が芋焼酎に移行していく中、球磨地方では米焼酎の生産が伸びていく。球磨川の伏流水や気候条件に恵まれた事もあり質,量ともに成長し,「球磨焼酎」は米焼酎の代名詞になりました。

主食であり清酒の原料でもある米を使った焼酎は,もちろん球磨地方ばかりではなく全国にあります。ただ球磨焼酎のメーカーは焼酎専業ですが,本州などの場合は清酒と並行して造られています。

本場球磨地方では、ガラという酒器に入れ、これを直接火にかけて燗をする"直燗"というスタイルがかって主流でしたが,アルコール度数のやや低いものが多くなったこともあり,アルミの器に入れてお湯でお燗するようになりました。お湯割り,水割,オンザロックなどがいけます。食べ物も特に選びません。

麦焼酎(産地:長崎県壱岐,大分県,宮崎県,福岡県)

壱岐は麦焼酎の発祥の地です。江戸末期には生産が始まっていたと言われ、明治時代に入って麦の生産が増大するとともに、蒸留される焼酎の量も増えていきました。。昭和に入ると沖縄の泡盛に使われる黒麹菌が導入され、生産量は一気に拡大しました。クエン酸を生産する黒麹菌は、暖地でもモロミの腐敗を防ぐ事ができ,壱岐地方の焼酎生産に大いに貢献したのです。ただし、今では、同じクエン酸をつくる能力のある白麹菌が使われています。壱岐の他には宮崎県と大分県が麦焼酎の主産地として挙げられます。壱岐は麦と米で麦焼酎を仕込みますが,今では大分や福岡の麦100%の麦焼酎の方が流通量は多いです。

原料の麦は4割ほど精白した大麦で,小麦が使われる事はほとんどありません。。麦焼酎には麦特有の香りがあり,まろやかで甘味のある味わいが特徴です。

そば焼酎(産地:宮崎県,長野県)

宮崎県では古くからいろいろな穀物で焼酎が作られてきました。作られる種類は、南部は芋焼酎、西部は米焼酎というように,それぞれの地域で取れる穀物により異なっています。なかでも有名なのが,高千穂地方で作られているそば焼酎です。原料の蕎麦は,脱穀して実だけを使う場合と、殻つきのまま粉砕して使う場合とがあります。近年は,そばの産地として有名な長野県もそば焼酎をいろいろ生み出しています。

そば焼酎には蕎麦特有の香りと軽快な味があります。こだわりのお蕎麦屋さんでは,そば焼酎を蕎麦湯で割ったものを提供しています。これがまたオツなんですね〜。

芋焼酎(産地:鹿児島県,宮崎県,伊豆諸島)

甘藷(さつま芋)の主産地である鹿児島県全域と宮崎県下の平野部で作られています。また,これら南九州から遠く離れた東京都下の伊豆諸島にも見られます。伊豆諸島で芋焼酎が作られるのは,江戸時代に薩摩人によって芋の栽培と蒸留法が伝えられた為です。原料の甘藷は,食用の芋のように皮が赤くて細長いものではなく,皮が白いか淡黄色で,丸くて大形の,でんぷんを多く含んだ品種が使われています。ここらへんは日本と同じような理屈です。食べて美味しいものが醸造に向くとは限りません。

芋焼酎には、蒸し焼きにしたサツマイモの芳香があり、原料の特性がそのまま製品の風味特性になっています。風味はソフトで甘みがあり、水や湯をどんな比率で混ぜても風味のバランスが崩れないのも特徴です。やっぱりお湯割りが一番でしょう。

酒粕焼酎(産地:全国)

粕取り焼酎ともいいます。全国各地の清酒メーカーで作られています。原料となる酒粕は清酒の製造過程でモロミを搾ってできるが,粕の中にはまだかなりのアルコール分が残っています。蒸留法は1,板粕をそのまま細分して蒸留する。2,水を加えてモロミにし,再醗酵させて蒸留する。3,熱風を当てて蒸留するなどがあります。

清酒焼酎(産地:全国)

清酒と同じ製造法でモロミを醗酵させ,これを固形物(酒粕)と液分(清酒)に分けて,液部のみを蒸留してつくる焼酎です。したがって,他の焼酎とは麹菌も酵母も異なり,おのずと風味も違ってきます。

味わいは軽いタイプで香りがよく,オンザロックや水割などがよく合います。また冷やしてストレートでもいけます。


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